島の航海日誌

日誌(毎日更新するとは言っていない)

リメイクファンが読む『アクエリアス・アルゴリズム』

【はじめに】

島(178cm)です。秋ですね。

眩しくも陽気に満ちていた夏が終わり、

時折吹き抜ける冷たい風に寂しさを感じるこの頃。

ですが、10月8日からは現行アニメシリーズ最新作

宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章-TAKE OFF-』が劇場公開。

先行した完成披露舞台挨拶に参加された方々も太鼓判を押しており、

期待値がうなぎ上りの日々です。

starblazers-yamato.net

ちなみに島が最新情報を考察している様子はぜひYouTubeチャンネルをご覧ください。

youtu.be

…今回は島が普段主題に置いているリメイクシリーズとは異なるもう一つの血脈。

いわゆる『旧作世界』―――オリジナルシリーズの話題です。

題材は過日遂に書籍化した小説作品、

宇宙戦艦ヤマト黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』。

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筋金入りのヤマトファンとしての感想については、

献本をいただいたというFGT2199さん・ymtetcさんの両名が

既にそれぞれ動画・ブログ記事を更新されていますのでココでは省きます。

youtu.be

ymtetc.hatenablog.com

お二人とは異なり、

僕は『リメイクシリーズが原体験』という層のファンです。

今回は旧作への造詣が深くない『リメイク世代』『ライト層』としての感想、に注力します。

旧作はまだ見たことがないから、

 アクエリアスアルゴリズムも見送ろうかな』

という読者の皆様も、どうかブラウザバックせず最後までお読みいただければ。

 

【『黎明篇』との出会い】

…と偉そうに講釈を垂れるのも何なので、

まず改めて僕自身の『ヤマト』体験をカミングアウトします。

「『アクエリアスアルゴリズム』という作品が

 ファンクラブ会報誌で連載される」

…という情報は連載開始段階から掴んでいました。

恥ずかしながら島は万年金欠ゆえ、

『ヤマト』公式ファンクラブ『ヤマトクルー』に加入できておりません。

そのために会報誌『ヤマトマガジン』に触れる機会がありませんでした。

 

加えて日頃の言動からお察しいただける通り島は根っからのリメイク世代。

その癖態度だけはデカくいっちょ前に界隈のご意見番を気取っている、

一番友達にしたくないタイプですね。

宇宙戦艦ヤマト』に端を発する旧作シリーズを通して鑑賞した経験に乏しく

各作品やキャラクターについても、

『この作品はこういう敵が出てきて、こういう結末を迎えるんだよな』

『このキャラはこういう設定で、このシーンが有名だよな』

…というwikipedia程度の知識しか持ち合わせていないという体たらくです。

 

そんな僕がなぜ今回旧作シリーズのミッシングリンクである

黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』を手に取ったのか。

…尊敬するヤマト二次創作の大先輩である

我が家の地球防衛艦隊』さんが制作に携わっていたからにほかなりません。

動機が不純というかなんというか…。

まあとにかく、

島が別に『筋金入りのヤマトファンで全作みっちり履修済み』ではない

むしろ旧作に対しては極めてライト、いわば『にわか』であることが伝わればと。

 

【『黎明篇』は旧作初心者にも楽しめるのか?】

僕と同じリメイク世代の読者さんは、ここまで読んで思うでしょう。

「黎明篇」って旧作の外伝でしょ?

 リメイクと別世界なら楽しめないんじゃないの?

…と。正直、僕も読み始める前はそう思っていました。

『きっと筋金入りの旧作ファンに向けたサービスが多くて、

 初心者の僕には満足に楽しめないんじゃないか…?』

結論から言います。杞憂です。

…思えば、僕の『ヤマト』原体験も同じような状況でした。

『「宇宙戦艦ヤマト」というタイトル、主題歌は知ってる』

『大昔に戦艦大和っていう艦が戦争で沈んだのは知ってる』

『主題歌の歌詞から、イスカンダルに行く話なのは知ってる』

10年近く前、『宇宙戦艦ヤマト2199』という作品の存在を知った頃の

島の脳内です。

 

そんな僕が『2199』を満足に楽しめなかったのか?

今の僕を知っている皆さんなら当然NOと答えるでしょう。

その通りです。

もちろん旧作のオマージュも多分に散りばめられており、

予備知識があることで楽しみが増える一側面もありますが、

単純にアニメ作品として楽しむ上では、必要とされる前提知識はゼロです。

 

『黎明篇』にも同じことが言えました。

この作品は『宇宙戦艦ヤマト 完結編』と『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』という、

二つの『旧作』の間に横たわる空白の17年間を補完する物語です。

二作共に魅力的なキャラクターやメカニックが多数登場し、

賛否はあるながらも重厚でスペクタクル溢れる物語が展開されます。

もちろん『黎明篇』にもこれらの要素が存分に取り込まれており

物語を追う上で避けて通ることはできません。

『きっと筋金入りの旧作ファンに向けたサービスが多くて、

 初心者の僕には満足に楽しめないんじゃないか…?』

知識不足に関しては一切心配しなくていいです。

もちろん『黎明篇』は両作を紡ぐ世界の物語であり、

『復活篇』に登場する新キャラのみならず、

『完結編』までの歴代作品に登場した数多くのキャラが物語に関わってきます。

 

彼ら彼女らのうち大部分の主要人物に関しては、

本編開始前の人物紹介でおおよそのプロフィールを知ることができます。

また、それを抜きにしても本編には彼らの人となり、

ひいては世界観を知ることができる描写が要所要所に散りばめられており、

旧作には無知な僕もキャラクターの輪郭や世界観は

おおよそ掴みながら読むことができました。

いわば『旧作ヤマトシリーズの1作』としてだけではなく、

純粋な小説作品として楽しめる構成になっている、ということです。

…『ヤマト』に限ったことではないでしょうが。

決して『旧作を見て、知っていることが必須条件』という作品にはなっていません。

そこに関しては安心してお楽しみください。

 

wikipediaと見比べながら作品を楽しむことは悪か?】

ここからはちょっと私見が混じります。

僕個人は小説をはじめ、初見の作品は何のノイズも入れずに

ノーカットで一気に踏破するタイプの人間です。

今回の『黎明篇』もその例に漏れず、

到着から2時間ほどで一気に全章を読破してしまいました。

旧作知識を調べながら読み返したり、キャラごとの細かい描写に着目したり、

色んなシーンを考察しながら読む『精読』に近い行為は、

今後ゆっくり時間をとって進めていくこととして、

『一先ずこの空気感、

 作品から受け取った熱量を自分の中に把持したまま完走したい!』

…作品を読んでいると、そんな感情が沸き上がるタイプの人間なのです。

 

少し前に、『映画を倍速で鑑賞する』という行為がネット上で話題になりました。

webサービスで配信されたり、レンタルショップで借りた映画の本編を倍速で流し、

効率的に鑑賞する…というのです。

僕自身、二度目の鑑賞以降は観たいエピソード、シーンまで飛ばしたりするので

別にこの鑑賞方法が悪だったり劣っているとは思いません。

作品の楽しみ方なんて人それぞれじゃないですか。

毎日通勤電車の中でチマチマ読み進めてもよし、

休みの日に腰を据えてじっくり読んでもよし、

学校の課題のように、参考文献と見比べながらじっくり咀嚼してもよし。

そこに他人が介在する余地も必要もないと思うんです。

『旧作初心者で知識不足だから、wikipediaと頁を往復してました』

『新キャラが出てくるたびに表紙裏の人物設定を見返して…』

こういう読み方も全然アリだと思います。

『考察・解説動画を見てから本編を見返してやっと腑に落ちた』

という経験、アニメを見ていたらきっとあるんじゃないでしょうか。

それと何の違いもないと思うんです。

『知識不足だから初見じゃ楽しめないかも…』

ではなく、

『初見で楽しめるように知識不足を埋める』

『知識不足を埋めながら読む』

という手法をとってもいいと思うんです。

 

【終わりに】

『知識量が多かったり、ファン歴が長い人がえらい』

…みたいな年功序列の風潮、

『ヤマト』に限らずファンの母数が多かったり歴史が長い界隈にありがちですよね。

そのどちらにも当てはまらない身として、僕は今回この記事を書きました。

『黎明』という言葉を辞書で引くと、『あけがた、よあけ』という意味のほかに

新しい時代が始まること』ともありました。

『2199』『2202』からヤマトに入った人。

嗜好や入手の難しさから旧作を観ていない人。

その経歴を恥じる必要はありません。引け目を感じないでください。

貴方は『リメイクヤマト』のファンであるだけではない、

立派な『ヤマト』ファンです。

 

長らく沈黙していた旧作シリーズから差し込んだ『黎明』の光。

リメイクシリーズ全盛のこの時代に『黎明篇』が発売されたのは、

決して偶然ではないはずです。

古き良き作品群に訪れた新しい時代の幕開け、これに乗らない手はありません。

 

『黎明篇』の物語は水惑星『アクエリアス』に潰え、再び興った縁に導かれた人々、

そしてその手によって構築された『アルゴリズム』によって終局を迎えます。

これから先も恐らく連綿と続くであろう”ヤマト”の物語。

ヤマトに導かれたあなたも、その『アルゴリズム』の一部なのかもしれません…。

とか言うとりますけども。おあとがよろしいようで![終]