島の航海日誌

日誌(毎日更新するとは言っていない)

"アマテラス"回収任務についての考察

■はじめに
 
本編投稿まで2カ月を切ったこの時期に新規カットの追加を決断した島です。バカだろ。今回の記事では、「冥王星沖海戦」制作中、ふと浮かんだある疑問について考察していきます。
 その疑問とは…

 「メ号作戦における”ウズメ”の存在はどう扱われていたのか」

 です。見るからに地味。

 まず、考察を進めるうえでキーとなる「メ号作戦」に関しておさらいです。

【メ号作戦】

 「ヤマト計画」によって建造された宇宙戦艦の最後の部品である「波動コア」を携えたサーシャとのランデブーを成功させるべく、国連宇宙軍第一艦隊によって遂行された陽動作戦。表向きにはガミラス冥王星基地攻略を目的にしたとされている。 

 ・「アマテラス」…サーシャを乗せた宇宙船を示す符牒
 ・「ウズメ」…火星に待機していた回収部隊。

■「アマテラス」はどういう存在として扱われていたのか

 符牒「アマテラス」は、無論「ヤマト」建造のための波動コアを携えたサーシャのことです。ですが、第二話での古代や島らの反応を見るに、「ヤマト」の存在は抜錨直前まで明かされていません。



 一方、第一話で司令部から「アマテラス」火星接近の一報を受けた島は、特に動揺したりせず「了解」「(古代に対し)出番だぞ」と受け答えしています。「2199」においてこの二人はあらかじめ「アマテラスの回収」という任務を明確に与えられているのです。

 ちなみに旧作では(冥王星での戦いの描写自体が別物なので比較すること自体ナンセンスではありますが)、「戦闘の最中に偶然飛来したイスカンダルの宇宙船を、偶々火星に滞在していた士官候補生の古代と島が回収する(=二人はおろか、沖田でさえその出現を予測していない)」…という描写になっています。もし「2199」において、アマテラスの存在が完全に秘匿されていたとしたら、「2199」本編での描写は旧作に近いものになっていたのではないでしょうか。

 さて。古代と島が「アマテラス」回収に関する情報を与えられていたのはいいとしても、「ヤマト計画」の発表に驚愕している以上、1から10まで全て知っていたわけではなさそうです。

 劇中では

 ・火星上空に突入してきた「アマテラス」を見て古代が「あれか」と呟く
 ・波動コアを手にした島が「これか」と呟く
 ・波動コアを受領した平田が二人に「確かに、ご苦労だったな」と声をかけている
 この引用のために本編を見返してて気づいたんですが、ちゃんとシェヘラザードから脱出艇が離脱している描写があるのに気づいて興奮しました。変態かな。

 以上の描写が明確になされています。これらの描写を素直に解釈すれば、古代と島は

 ・火星に到達する予定の宇宙船と接触して
 ・波動コアを回収する 

 以上の2点を任務として受けていたものと思われます。もちろん「宇宙船」は地球に救いの手を差し伸べた異星人の艦で、「波動コア」は地球を救うための宇宙戦艦に必要なパーツ…というのは極秘事項ですから、その辺の仔細は伏せたうえでの伝令であったことは想像に難くありません。

 余談ですが、「波動コア」が何として扱われていたか―――についても少しだけ考察してみます。

 「これは先日のメ号作戦において回収されたメッセージ映像だ」

 「2199」第二話で「ヤマト計画」を発表するにあたって、沖田はそう切り出します。むらかわ版では「通信カプセルに収められていたメッセージ」となっており、いずれにせよ波動コアにはそれなりの通信(映像記録)機能が備わっていることが窺えます(本編の描写だけでは「波動コア=通信装置」という確信は持てませんが、むらかわ版では波動コアが通信装置である描写が明確にされているので、ここでは通信機能があることにします)。

 以上のことから、「波動コア」は旧作同様に「通信カプセル」として扱われていたと推測できます。

 更に余談ですが、むらかわ版ではシェヘラザードの脱出艇を目にした島が「ガミラスとも地球のものとも違うようだ」と発言しています。

 旧作では火星に墜落した宇宙船に対し、古代が「冥王星の付近で戦闘中なんだ、どっちかの艦が落ちたんじゃないのか?」という推測を立てています。これはこの発言から着想を得た仮説なのですが、もしかしたら「かつての戦闘で損傷した艦艇(地球・ガミラス問わず)が火星に墜落する可能性がある。その場合は当該艦と接触し通信カプセルを回収せよ」…みたいな別命を受けていたのでは…?この説を採用すれば、司令部から命令を受けた島が冷静に対応していたことへの説明もつきます。

■「ウズメ」の存在はどう扱われていたのか

 「2199」本編は、冥王星沖に到達した駆逐艦”ユキカゼ”のカットから始まります。そのため、「メ号作戦」以前の様子は回想シーンを除けば描写がありません。特に、今回の記事で重要になってくる「メ号作戦」関連では、17話での古代と真田の会話、第一艦隊抜錨シーンがせいぜいです。



 地球~冥王星の航海の様子は妄想するほかありませんが、公式設定を紐解くと時系列は以下のようになっています。

 2198/12/25 第一艦隊抜錨

 2198/12/26 「ウズメ」が火星到達

 2199/01/17 メ号作戦発動

 ここで特筆すべきは、「古代と島が火星に降下したのは第一艦隊が抜錨した後、冥王星沖への航海途上のことである」という点です。


 17話での描写を見るに、ウズメを収容している”キリシマ”は、僚艦と同時に地球を抜錨しています。また、往路(23日間)と復路(22日間)で所要時間が変わらないことから、第一艦隊は往路においても地球→火星→冥王星という経路を辿ったとみるのが無理のない解釈でしょう(公転による位置関係の誤差や、帰路のキリシマの損傷度合いなどは今回無視します)。

 「機密保持のために”キリシマ”だけが火星経由、それ以外はそのまま冥王星を目指した…」という解釈も決して不自然ではありませんが、単艦行動中のキリシマがガミラスの奇襲を受けて撃沈されるリスクを考えると不安が残ります。また、帰還時は母艦である”キリシマ”が火星上空で待機していることからも、流石に100式空間偵察機に単機での地球往還能力があるとは考えがたいです。
 以上の考察から、「第一艦隊は火星宙域を経由しており、その過程で”ウズメ”が火星に降下する場面を乗組員が目撃している」という状況は、決して無理な解釈ではないと考えられます。



 ですが、第一艦隊の乗組員はその多くが「メ号作戦」が陽動であることを知らずに戦死した、と説明されています。彼らに対し「火星でのランデブー、通信カプセルの回収任務を帯びた兵を送り届けるため本艦隊は火星を経由する」という説明をしたとは、正直考えづらいです。

 では、艦隊司令部は彼らに対しどう説明したのか。
 
 ヒントになりそうなセリフが、第二話にあります。

 「諸君はこれまで、特殊任務の訓練を受けてきたイズモ計画の選抜メンバーだ」

 ”ヤマト計画”発表直前、集結した兵士たちに対して沖田が告げた第一声です。古代と島は「火星での長期滞在訓練」という名目で第一艦隊に同行し、火星に降下したのではないでしょうか。

 この説を補強するもう一つの材料として、古代と島が共に西暦2198年に士官学校を卒業していることが挙げられます。彼らはまだ駆け出しの新米宇宙戦士。人材不足に悩まされていた国連宇宙海軍が、若年兵の育成に力を注いでいた可能性は十分にあり、「新人兵士の火星での実地訓練」という名目はカモフラージュとして機能しえます。

■終わりに

 「ウズメに与えられた任務は”通信カプセルの回収”だったのではないか」
 「ウズメの存在は伏せられていなかったが、艦隊の面々には”訓練中の新米兵士”として知らされていたのではないか」

 …長々と書き連ねた割にはいまいちインパクトに欠ける結論ですね。今までこのあたりを深く掘り下げた考察を見かけたことがなかったので、今回作品制作のついでにまとめてみました。重箱の隅をつつくような、毒にも薬にもならないような内容で恐縮ですが、楽しんで読んでいただけていれば何よりです。「これを知ってると作品が10倍面白くなる!」と言えるほどの情報ではありませんが、少しだけお話が飲み込みやすくなるかもしれないです。多分。
 ではまた。